公益目的事業は公益事業にあらず!
2008年10月27日

非営利法人総合研究所(公益総研)
主席研究員 福島 達也

 

公益性の認定を得るには、公益認定法第5条各号の認定基準に適合しているかどうかがカギを握るわけだが、法人の事業のうち、個々の事業が公益目的事業かどうかということを特定することはとても難しい。

公益認定法第2条第4号に定める公益目的事業の定義は、ガイドラインによると、A(学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業)であって、なおかつB(不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの)であるということなのだが、そうすると、ほとんど従来の公益法人の事業は公益目的事業になっているような気もするかもしれないし、そうでないような気もするであろう。
そこで、公益目的事業かどうかということを事前にチェックすることが求められるのだが、個々の事業がまず認定法の別表に掲げられた23の事業のいずれかに該当しているかどうかを確認するのが、Aという作業だ。
しかし、これについては、従来の公益法人であれば、文句なくどこかに該当することになるであろう。
拡大解釈してもよいのだから。

次に、Bという作業については、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与しているかどうかで、こちらの判断は相当高度な判断が求められる。

特に、個々の事業が特定の者のみの利益の増進になっていないかどうかを確認することになるのだが、いくらガイドラインで掲げられた公益目的事業の事業区分と具体的な事業名に自分たちの事業が示されている(たとえば検査検定とか資格付与)からといって安心することはできない。
そう、それは入り口に過ぎず、その先のチェックポイントという関所を何か所も通らないといけないのだから。
逆に言うと、示された事業名に自分たちの事業が載っていないからといって、がっかりする必要もないのだ。
示されていない事業でもちゃんとチェックする事項が定められているからである。

ただ、注意しなければならないのは、従来の公益法人が今までやってきた事業は公益目的事業になると信じている人が多いことだ。

主務官庁が公益事業として認めたからこそ、許可を得て公益法人になっているだから、もし公益目的事業にならないのであれば、主務官庁は何をやっていたのか?
と、主務官庁のせいにする人までいる。

しかし、ここでぜひ覚えておいてほしいのは、今度の法律には公益事業などというものはないのだ。
公益目的事業かそうでないか、2つに一つだ。
つまり、今までの公益事業が、公益目的事業と非公益目的事業に分かれるということを知って欲しい。
もっといえば、お役人が認めた公益的な事業のことを「公益事業」といい、有識者が認める公益的な事業は「公益目的事業」なのだ。

だから、新たな指標で再度審査する必要があるというわけだ。

ということで、今までの指標はすべて捨て去り、新しい指標にちゃんと対応するように、事業を細分化したりまとめたりするべきである。
つまり、定款をガラッと変える勇気が必要なのだ。特に事業の種類は思い切って変えることをお勧めしたい。



例えば今まで「講座、セミナー、育成」に続いて試験合格者などに資格を付与するという事業を「○○○に関する資格認定試験事業」としておこなってきた場合、「講座」と「資格付与」というものが1つの「類似、関連しているもの」であり、事業として一体として整理し得るものだから、事業名は「資格認定試験事業」などとまとめてもよいが、どうせ、複数の事業区分のチェックポイントを適用されるのであれば、「講座事業」と「資格付与事業」に最初から分けておいた方が分かりやすいかもしれない。

また、例えば博物館で売店とか食堂をする場合、ただ、「博物館の運営事業」としてしまうと、当然こういうものはまとめてチェックすることはできないので、これは収益事業等ということに区分されてしまう。

だから「歴史的資料の展示事業」と「食料・飲料品・キャラクターグッズ等の販売事業」に分ければ、前者は公益目的事業に分類され、後者は収益事業等に分類されることになるであろう。もちろん、後者は、収益事業として、定款にも記載しておくことが必要だ。

また、公益目的事業と認められるような「セミナー」に必要な企画会議など、事業に付随して行われる会議や委員会などは、その事業の一環としてよいので、それに要する費用は、当然公益目的事業の費用に含まれることになる。

委員会費を平然と会議費として「管理費」に入れている法人は意外と多く、そういう団体は決算書から見直してほしい。

なお、チェックポイントでよく出てくる表現の中で、特に用語で注意すべきものがある。

まず、「機会が、一般に開かれているか」とは、共益的に行われる事業を除くという趣旨のことで、具体的には、受益の機会が特定多数の者、例えば社団法人の社員に限定されているような場合は原則として共益と考えられるということ。

ただし、学会の「学術セミナー」のように、参加の機会を学会員に限定することによって質を確保することは、受益の機会が「限定されている場合でも、例えば事業目的が別表各号を直接実現するといった合理的な理由がある場合には、不特定多数の者の利益の増進に寄与するという事実認定をし得る」ということで、公益目的事業と考えてもよいことになるのだ。

次に、「専門家が適切に関与しているか」とは、「専門家」というのは事業の内容に応じていろいろなタイプの「専門家」がいるが、その者が「適切に関与しているか」という表現は、必ずしも法人で雇用しているという意味ではなく、理事にいてもよいし、審査委員にいてもよいし、ボランティアでも良いのだ。
要は、「事業を遂行するに当たって適切な関与の方法であればよい」という意味なのだから、外部の専門家を効果的に使うべきであろう。



また、公益目的事業になるかどうかは、ガイドラインを見ながら粛々と自分たちのどの事業が公益認定されるのかどうかをチェックしていくことになるのだが、なかなかガイドライン通りにチェックすることが難しい事業もたくさんあるのではないだろうか。

特に新規事業。
まだ実際に事業をしていないが、公益目的事業が足りないからと、新しく始めようとする法人もあるだろうし、一般法人を設立してすぐに公益認定申請をしようとする法人もあるだろう。

そういう事業は、計画書にしか反映していないので、判断がとても難しいのだ。
そこで、最終的には認定委員会が主観で判断することになるが、わからない部分はヒヤリングになる可能性もあるであろう。

つまり、具体的案件における審査及び監督処分等については、法令に照らして、個々の案件毎に判断し、判断しにくいものは、個別に説明を求めることになるのだから、きちんとした計画に則って、今すぐにでも実行できる、そして、ちゃんと継続してやっていける事業だけを計画するべきであろう。

万が一、説明を求めても、実際まだ事業活動に至っていないような場合は、絵空事のような話になる可能性もあるので、法人からの申請内容が具体性を欠く場合は、内容が不明確であるために、当然結果として不認定となるであろう。

ということは、新規の事業については、よっぽど細かいところまで計画しておかなければならない。
新規法人の場合は、できれば、1事業年度その事業をやってみて、そのあとから認定申請をすることをお勧めしたい。

公益総研株式会社 非営利法人総合研究所

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